my History

2009年4月 名古屋工業大学大学院産業戦略工学専攻(MOT)へ入学
2011年1月 ボードゲーム製作事業を始動
2011年3月 MOTを修業
2012年1月 個人事業"Product Arts"を起業
2012年3月 ゲームマーケット2012大阪に出展。初作品「COMPANY:BOCG」を発売。
2012年5月 ゲームマーケット2012春に出展。
2013年3月 ゲームマーケット2013大阪に出展。2作目「AKINDO」を発売。
2013年4月 ゲームマーケット2013春に出展。
2013年10月 キックスターター発「Akiba Anime Art Mangazine」付録TCGのシステムを担当。
2013年12月 3作目「BIRTH」を発売。
2013年12月 ゲームシステム担当の「真空管ドールコレクション」がJH科学から発売。
2014年1月 第1回名古屋ボードゲームフリーマーケットに出展。
2014年3月 ゲームマーケット2014大阪に出展。「BIRTH第2版」を発売。
2014年4月 ”プロダクトアーツ合同会社(Product Arts LLC)”を設立。
2014年6月 ゲームマーケット2014春に出展。「彼女のカレラRS TTG」を発売。
2014年7月 北陸ボードゲームフリーマーケットに出展
2014年10月 SPIEL'14(ドイツ)に出展。
2014年11月 ゲームマーケット2014秋に出展。
2015年1月 第2回名古屋ボードゲームフリーマーケットに出展。
2015年3月 ゲームマーケット2015大阪に出展予定。
海外向けブランド「cocolo games」から「ART OF WAR the card game」を発売。
2015年5月 ゲームマーケット2015春に出展。
2015年6月 ゲームデザイン論を寄稿したWEB-DB PRESS vol.87が技術評論社から発売。
2015年7月 Board M Party(韓国)、Swan con(台湾)に出展。
2015年10月 SPIEL'15(ドイツ)に出展。古事記学習カードゲーム「神道」を発売。
ゲームシステム担当の「Beast Master Tale」がSony Music Entertainment社から発売。
2015年11月 ゲームマーケット2015秋に出展。
2016年2月 ゲームマーケット2016神戸に出展。
2016年3月 Swan con(台湾)に出展。
2016年5月 ゲームマーケット2016春に出展予定。新作「Twelve Heroes」発表予定。
2016年8月 GEN CON(米国)に出展予定。
2016年10月 SPIEL'16(ドイツ)に出展予定。

2012年12月26日水曜日

テーマの疑似体験を生じさせる中核的要因

寝ても起きてもボードゲームの事ばかり考えるという生活に突入して、およそ2年が経とうとしている。
現時点で行った個人的な考察の内の1つを備忘録としてここに記しておくことにする。


テーマ性の有るゲームは、そのテーマを如何に疑似体験できるかが意味ある遊びのカギを握っているのではなかろうか。言い換えると、疑似体験の水準(リアリティの度合い)が上がると、それに比例して意味ある遊びの水準(より面白い、より経験に意味を見出せる)も上がっていく、という仮説の下に、日々新しいゲームを思案している。

テーマとシステムとの整合性については、当初から直感的に重要性を感じていた。そして、ゲームマスターを務める機会が増えてきて、その考察をするヒントを得ることが出来た。

誰でもすぐにプレイできる言語依存性の無い定番ドイツゲーム、というと、もちろん数多く存在する。初めてドイツゲームをプレイするという方にはそういったものを勧めるのが定石だろう。しかし、僕は別の選択肢をとることの方が多い。つまり、テキストが多くて複雑なシステムを持つ『アグリコラ』を最初に紹介するのである。そして今のところ、かなりの確率で高く評価され、受け入れられる。

それは、コマが可愛い、インストに自信がある、そういった要因ももちろん大切である。ゲームのテーマと体験の整合性という点に絞って考えてみると、個人ボードに牧場が出来上がっていく様が見えるという事が、疑似体験に大きく貢献している。もう一点、膨大な種類のカードにも着目したい。カードのテキストは、どれもシステムがプレイヤーに要求する操作に関する内容なので疑似体験に貢献するものではない。多様に存在するカードの”カード名”の部分の短いテキストが疑似体験を喚起させているのではなかろうか。勿論、イラストの存在も大きい。テキストやイラストの存在がプレイヤーの思考に画一的なイメージを転写する。イラストとテキストとの差として、テキストの場合は読み上げることが可能であり、聴覚からも情報が伝わってくるという点も、経験にとって重要な要素である。

ゲーマーは、ゲームシステムとプレイヤーとのインタラクションから、テーマに沿った”解釈”をし、プレイする。それが正にドイツゲームの楽しみ方の重要な要素であるのだが、これをドイツゲームは初めて!ゲームもほとんどしない!(ノンプレイヤー)という方に求めるのは難しい話である。

カルカソンヌというゲームは、誰でもすぐにプレイできる素晴らしいゲームである。しかし、当然面白いと思ってノンプレイヤーに披露しても、面白さを感じて頂けないケースが何度もあった。最初は、ノリが悪いな~と、とか、もっと楽しめばいいのに、などの思考で停止してしまい、深い考察をしようとしていなかった。それがあるとき、「勝利条件のための数字をただ数えているだけの淡々としたゲーム」という感想を頂いて、なぜ彼らが楽しめなかったのかを考察する1つの手がかりを得た。つまり、ノンプレイヤーはゲームシステムの応答をありのままに解釈しており、テーマと結びつけるという考え方を持っていなかったのである。故に、淡々としたアブストラクトゲームを体験し、その様なゲームを楽しめない方(多数派ではなかろうか)の場合は拒絶反応が出てしまうのである。テーブルを囲んでいても、当然盛り上がりに欠ける。

アグリコラの場合、コマやテキストの存在が、一定以上の疑似体験をプレイヤーに対して補償しており、終始アブストラクトゲームと解釈してゲームを終えることは、逆に、非常に困難なのである。

というのも、全ての(あえて言い切っているが)ノンプレイヤーの根底には、人生ゲームがある。これは全く無視できるものではない。

人生ゲームと言えば、言わずと知れた、プレイヤーの人生を疑似体験するスゴロクである。乱数が示す数字の分だけ自分のコマを進めていき、止まった(あるいは通過した)マスの”テキスト”を”読み上げて”指示に従う。そして、そのテキストの約80%が、ゲームシステムがプレイヤーに要求する操作ではなく、テーマに沿った内容になっている。仮に、ゲームを、プレイヤーとシステムとのやりとりの結果、と定義すると、これは全く”余分”なテキストなのである。だがゲームをもう少し広義的にとらえて、ルールの中で意味ある経験をする、という定義で考えると、その余分と考えられたテキストは、必要不可欠な要素となる。

本筋に戻ると、人生ゲームが万人に支持されている理由は、人生ゲームが万人に対して意味ある経験を保証できるからである。具体的には、ゲームシステムの応答がテーマに沿ったテキストで表現されることで、どの様なスタンスでプレイしても最低限のテーマの疑似体験を得ることができる。

同様の視点でアグリコラのプレイヤーを客観的に観察していると、牛の肉がどうとか、あなた~ごはんよ~、などをプレイヤーが積極的に発言し、テーマを再現しているときに、場の緊張状態は一旦緩み、笑や会話が生まれている場合がほとんどである。いわば、無垢なゲームシステムという白黒の世界の中で、プレイヤーが積極的に彩りを加えていくことで意味ある遊びの水準が向上して行くのである。それは、正にプレイヤー同士、観戦者の共同作業なのである。

なぜ、よりリアルな疑似体験が出来ると意味ある遊びの水準が上がるのか、という疑問がここで生じるが、本筋と大きく話がそれるのでここでは触れない。また、UNOやジェンガといったテーマ性の無いゲームに対しては、全く別の考察が必要である。なぜなら、人生ゲームとUNOとでは、プレイヤーは全く異なる体験に意味を見出していると考えられるからである。

日本という土地で、テーマ性を有するドイツゲームを普及させる。その為には、テキストが疑似体験を手取り足取りアシストしてくれる人生ゲームという土壌は、全く無視できない。

ドイツゲームの大きな特徴として、低い言語依存性が挙げられる。つまり、ゲーム中に使用するカードやボードなどに、テキストが少ない(或は、無い)のである。テーマの疑似体験を保証するには、テキストが強力なツールであるにも関わらず、それが、無い。人生ゲームが提供するサービスとは対極である。それをアブストラクトゲームとしてだけでなく、テーマの疑似体験をするゲームとして楽しむには、積極的な想像が要求される。これが、現状、人生ゲームのシェアほどのノンプレイヤーに対して面白さを保証できていない最大の要因の1つであると結論付ける。

ドイツゲームはこうやって楽しむのですよ、という考え方の普及が必要である。その為の草の根活動として、出張ゲームマスターをするとき、上記の点に注意して場を盛り上げようと心掛けるようにしている。また、ゲーム制作においては、一貫してテーマの再現性を中核的なコンセプトとしている。

言語依存性を低減させつつ、疑似体験の水準を上げる。その方法を思案しながら、今日もノートに落書きを這わせることにする。

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ART OF WAR the card game PV (Japanese)